アニメ映画「失くした体」の魅力を紹介【おすすめ・感想レビュー】

基本情報

監督:ジェレミー・クラパン
脚本:ジェレミー・クラパン
   ギョーム・ローラン
原作:ギョーム・ローラン
音楽:ダン・レヴィ
制作:Xilam
公開:2019年11月29日
分類:ヒューマンドラマ

キャスト
ナオフェル:木島隆一
ガブリエル:志田有彩
ジジ:ふくまつ進紗

あらすじ

ピザ配達員の『ナオフェル』は、配達先のマンション住人に接客を注意されたことを皮切りに、インターホン越しの長話をする。
その『顔も知らない彼女』に惹かれたナオフェルは、彼女の勤め先を探し訪れるのだった。

作画タッチとキャラデザ

光と影はほとんど描かれていませんし、それに加えて全体的に濃い色が使われているため『重い印象の作画』になっています。

キャラデザは『鼻・唇・眉毛』がしっかり描かれた、かなりリアル路線のデザインで、日本アニメからすると異質です。

右手の冒険

本作は二つのパートが交互に描かれ、その一つが『移動する右手』です。

まるでクモのように五本指を脚として使って移動する右手には、迷いがなく『明確な目的地』を目指していることが感じ取れます。

面白いのが、右手だけとはいえ『意識や知能』がある点です。
保管されていた施設から脱出する際は、清掃員などにバレないように移動し、人骨模型やロッカーの扉を使ってうまいこと脱出します。この過程は『トイ・ストーリー』を彷彿とさせます。
また、赤ん坊や盲人の前では隠れることをせず『バレてはいけない人間とそうではない人間』を判別しています。

右手と小動物

右手が動物と格闘するシーンが印象的です。

鳩に高い所から落とされそうになるシーンでは、鳩の首元を掴むことで何とか落下を回避します。
これによって鳩は死んでしまい、なかなかのグロシーンになっています。
とはいえ、人間が鳩を握り殺すのとは違い『生きるために行動した結果』なので、残酷なシーンにはなっていないのがポイントです。

ネズミと格闘するシーンでは、集団で襲ってくるネズミに対して、ライターの火を向けることで危機から脱します。
『サイズは小動物でも、知能は人間』というどっちつかずなバランスが面白いです。

主人公の恋物語

二つのパートの、もう一つが『恋に動かされる主人公』です。

書きませんが『主人公に何が起きるのか』は容易に想像がつきます。
なので、物語が進めば進むほど『起きる悲劇』に近づいていくのが分かります。
画面の中で描かれているのは『冴えない青年の恋物語』なのにも関わらず、恐怖を感じさせられるのが新鮮です。
特に、ナオフェルがある仕事に就く展開は『その仕事だけはやめてくれ…』と目を伏せたくなります。

悲劇と運命

ついに訪れてしまう悲劇が、前兆があり段々と襲ってくるのではなく『何気なく不意に』襲ってくるのが恐ろしすぎます。
しかも『誰も悪くないし誰のせいでもない』にも関わらず悲劇は起き、これは現実でも日々起きているわけです。
悪人がいれば楽なのかと言えば絶対違うけど、『悪人がいなくても悲劇は起き』そんな世界で自分たちは生きているということを改めて感じさせます。

本作のテーマは『運命』だと思います。
ナオフェルは小さい頃にも大きな不幸を経験していて、自分の運命に絶望して命を絶ってもおかしくありません。
そんなナオフェルが取った『ビルの屋上から鉄塔に飛び移る』という行為には、とても頷けます。
失敗すればまず間違いなく命を落とす行動を取ることによって『不幸な運命』から脱しようとした。
『これで失敗するようならそれまでだし、成功したら希望を持って生きよう』という決心で、あの行為に至ったんだと思います。

最後に

どん底まで落ち込んだ時こそ、希望をくれる映画です。

推しキャラ
ナオフェル

本作の魅力的な要素
雰囲気 ストーリー 質感 キャラデザ