【ミッドサマー】何回も見たくなる名作ホラー映画【おすすめ/感想レビュー】

基本情報

時間:147分
公開:2019年
分類:スリラー

あらすじ

アメリカの大学生『ダニー・アーダー』の妹が、両親を巻き込んで無理心中してしまう。
苦しむダニーを恋人の『クリスチャン・ヒューズ』は重荷に感じるも、別れるという選択に踏み切れずにいた。
そんな中、ダニーとクリスチャンは友人の故郷である村の夏至祭に行くことになる。

ポイント

ダニーとクリスチャン

ダニーの妹は双極性障害を持っていて、それを心配しているダニー(抗不安薬を摂取するほど不安に悩まされている)はいつもクリスチャンを頼っています。
そのことをクリスチャンは面倒に感じている一方、見放すこともできずにいます。

ダニーもクリスチャンに面倒だと思われていることを察していて、かといってそれを本人に確認することもできていません。
また、クリスチャンの方からは頼ってこず、いつも自分が一方的にクリスチャンを頼っていることに罪悪感(同時に不満)を抱いています。

互いに気を遣っていて、仲悪くなることもできない、非常にぎこちない関係です。

そしてダニーは、クリスチャンに対する不満を募らせていきます(スウェーデンに行くことを黙っていた。付き合って何年かを覚えていなかった。誕生日を覚えていなかった。ショッキングな出来事に対する反応の温度差。など)

画面

メイン舞台となるスウェーデンに行くまでの20分強くらいのシーンは、画面がかなり暗いです。
逆に、スウェーデンに行くと非常に画面が明るくなります。

その光景は、暗いシーンで悲惨が起きたように、明るいシーンでは希望が待っていることを示唆しているようにも見えますが、実際は逆。
美しい白昼夢の中で、更なる地獄が待っています。

ただ、ダニーにとっては地獄ではなかったのかもしれない。
ラスト、彼女の顔には笑顔が浮かんでいるからです。
とはいえ、その笑顔を単純にポジティブなものとして受け取ることはできません。

また、画面がゆっくり横移動したり、ゆっくり寄ったり引いたりするカットが多いです。

価値観

異文化の村にやって来たダニーたちは、そこで見るにもおぞましい光景を目にすることになります。
それに対して当然ダニーたちは拒否反応を示しますが、村の人たちは「古くから続く風習だ」と説得しようとします。

このシーンを見て想像したのが、安楽死の是非です。
僕個人としては安楽死はあって欲しいなと思うけど、「安楽死なんてありえない」と思う人もいますよね。
つまりそこには価値観の違いがあるわけです。

だからこのシーンで起きる価値観の衝突のように、その社会で許されていることが到底受け入れられないってことは、現実社会でも日々起きていることです。
そして、その社会で許されている(あるいは禁じられている)ことが、本当にそれでいいのかは常に問い続ける必要があると思います。

ということで真面目な話でした。

演技

演技面で注目して欲しいのが、ダニー役の精神的に苦しんでいるときの演技です。

ポイントは、ダニーの精神状態。
僕の経験上、精神的に辛いときの第一段階は『泣けない』状態で、それを超えると『直ぐに泣いてしまう』ようになると思います。
ダニーは後者で辛さが表に溢れ出るのですが、そのリアリティが凄いです。

今にも溢れ出そうなショックを必死に抑えようとする演技とか、呼吸が苦しくなった状態で息を吸う演技。
そして一番凄いと思うのが、ショックのあまりに泣き喚く演技です。
一歩間違えれば臭い演技になりかねないものを、本当に苦しんでいるようにしか見えないものにしていて、素晴らしいです。

幻覚の再現

本作はキャラクター(主にダニー)の見聞きしている幻覚のようなものが、映像や音響で再現されていると思います。

一番印象的なのは、ダニーがマジックマッシュルームを摂取したときのシーン。
ダニーの手の甲からは草が生えていて、ダニーが木に意識を向けると木が風で揺れる音が強くなります。
そのあと不安に襲われると、環境音が消えて不穏な音楽が流れ始めます。
一人で歩き始めたダニーに向けられた集団の笑い声は、ダニーが別の男に声を掛けられると一気に弱まり、小屋に向かう場面では映像がグネグネになります。

このように、キャラクターに見えているものや聞こえているものを再現したと思われるシーンがあり、引き込まれると同時に自分も幻覚体験をしているような感覚になります。

仕組まれていた

ストーリーに関して思っているのが、本作で起きることは村が仕組んだことではないかということです。

ダニーの家族の死も、ダニーたちがホルガ村に行くのも、村で起きることも、全ては村側が仕組んだことで、その計画通りにダニーたちは身も心も動かされていたように思います。